鉾が建つまで

7月10日       「縄がらみ ~その1~」

 まずは弊社工場にて櫓を組みます。4本柱を貫(ぬき)と筋違いで繋ぎ、栓(せん)で固定しその後、藁縄にて補強。これを「縄がらみ」といい、出来た結びにはそれぞれ名称があり、正面の一番大きいものを「雄蝶結び」、背面が「雌蝶結び」、それぞれの面の4つ角の下2つを「亀結び、上2つを「鶴結び」といいます。鉾が完成するとこれらの結びは見えなくなってしまいますが、それでもいかに美しく結ぶかが職人の腕の見せ所になります。12~15人もの職人が丸1日かけて組みあげるこれらの構造は、若干の違いはありますが、すべての鉾に共通しています。

7月11日       「縄がらみ ~その2~」

 四条室町にて7月10日より行われている芯木の縄がらみが二日がかりでようやく完成です。全体を藁縄で巻いた上に、鉾頭や天皇台、金幣等を取付け、赤熊(しゃぐま)といった飾り結びを作ります(写真中央)。榊をつけ(写真下)、一般の方々に紙垂(しで)をつけていただき、準備完了です。その間に櫓の方では、鉾建ての段取りが行われています。

7月11日       「鉾建て」

 いよいよ「鉾建て」です。芯木を横倒しにした櫓に差し込み、南北からジャッキをワイヤーとロープで繋ぎます。双方で息を合わせて鉾を起こしていきます。重心と支点が垂直になるときにロープをたるませてしまうと勢いよく鉾が起きて、その衝撃で芯木が痛んでしまうこともあります。合図者とジャッキを操作する二人のチームワークが必要とされる非常に重要な作業です。全長約25mもある鉾が徐々に起き上がっていく様は迫力満点で、無事に起きると見物している方々から拍手と歓声が上がるほどです。

7月11日       「石持ち・車輪」

 無事に鉾が建つと次は全ての重量を支える「石持ち」を取付けます。1本葯500kgもある石持ちを台車で運びジャッキで鉾を持上げて櫓と組み合わせます。そのまま車軸を石持ちの下に取付けて、さらに全体をジャッキで持ち上げて車輪をはめ込みます。人も乗ると総重量が約10tにもなる鉾を支えるこれらは、石持ちは「欅(けやき)」、車軸・車輪は「樫(かし)」という堅木で作られています。鉾の形がみえてきたところでこの日の作業は終了です。

7月12日       「化粧材・懸装品」

 次は、囃子方が乗る床と屋根の組立てです。地上葯5メートルでの作業となるので、足場を組みます。足場と化粧材等が収められている倉庫の3階を繋ぎ、そこから屋根の化粧材等を取り出して組み立てていきます。漆塗りや彫刻が施されたものばかりなので全員手袋をして細心の注意を払い作業を行います。さらには地上では、狭くなった室町通りを一般の方が通行しています。小さなもの一つ落としても大事故に繋がるので気の抜けない最も危険な作業の一つと言えます。屋根廻りの作業が終わると足場を解体して、胴掛けや水引き、飾り金物等の懸装品を取り付けて「菊水鉾」の完成です。

7月12日       「曳初め」

 12日の午後には曳初めが行われます。通りすがりの方や菊水鉾を目当てに来ていただいた方、毎年非常に多くの方に参加して いただいています。

7月17日     「巡行」

 見せ場はなんといっても「辻廻し」です。10tもある鉾が曲がっていく様は圧巻です。

7月16日       「宵山」

 12日が終わると私たちの出番はひとまずおあずけ、17日の山 鉾巡行に備えて英気を養います。15、16日の夜になると四条通り界隈は歩行者天国になり、出店や鉾を目的とした人々で溢れ返っています。

祇園祭は毎年同じ日付けで行っています。鉾それぞれの細かな違いなどの発見もあるかと思います。

是非とも一度四条通り界隈に足をお運びください。